「うずら理髪館」私が子供のころにお世話になった床屋さんです。 約30年ぶりにたずねた町で、元気に仕事をしているご主人渡邊菊松さんを見かけ、思わず店に飛込んでしまいました。(3年前)
そんな私に昔と変らぬ穏やかな表情でいろいろな話を聞かせてくれました。86歳を越えた年齢とは思えない身のこなしに驚きさえ感じました。

掲載記事はプレス空知(空知新聞社)伊藤俊喜様より

プレス空知(空知新聞社)8月27日号
「まちの床屋さん」閉店
上砂川町のうずら理髪館
54年間営業 8月末で・・常連さん「寂しいね」

(画像中の写真は、カラー写真で合成しています)


 「常連さんに言われるとつらいけど、ここらが潮時と思ってね」―。町内2条通りに面した一角で54年間営業を続けてきた「まちの床屋さん」、うずら理髪館=渡邊菊松さん(88)経営=が今月いっぱいで閉店することになった。10坪ほどの小さな店内には椅子が2つ。これまで大勢の人たちに笑顔を映してきた大きな鏡には、渡邊さんの明るくも寂しそうな顔が映っている。

 昭和26年、34歳にして上砂川に店を構えた。14歳からの奉公時代を含めると通算74年のキャリアにもなる。「お手伝いではなく、1人で経営しているのは、おそらく管内で最高齢」(理容店関係者)という。

 高齢でも、気力は十分、声に張りがあり、手に震えもない。カミソリ研ぎは若い理容師なんかに負けない自信がある。ただ、「刃物を持つ商売だから、お客さんにケガさせちゃあいけないでしょ。元気なうちに区切りをつけないと」と、2年前から引退することを少しずつ考えていたという。だが、足を運んでくれる常連さんの顔が脳裏をよぎり、なかなか決心がつかなかったという。

 長い歩みにはいろいろな出来事があった。炭鉱の盛り上がりから衰退まで上砂川町と共に歩んできた。全盛期は午前7時から、夜中の2時まで店を開いたことも。「お客が途切れなくて、そりゃあ忙しかったですよ」と振り返る。開店当初は100円だった料金も今では3300円になった。

 誕生日を迎えた今月8日、閉店を告げる紙を店前に貼り出した。その日以来、知らせを聞きつけた長年の常連客が「最後の散髪に」と次々に訪れている。40年余り通う松島正光さんは「閉店と聞いて泣きました。これから行くところがなくなっちゃうよ」とポツリ。「腕も良く、いろんな話題を楽しみにしていたのに」と指定席を失う寂しさと、渡邊さんの人柄を慕う気持ちが凝縮されている。引退後、長年積み上げた技は、奥さんの散髪の時、月に一度だけ封印を解くという。

 「みなさんのお陰でここまで続けられました。最後の日まで頑張ります」と話す渡邊さん。まもなく、毎日回り続けた3色のサインポールを止め、ハサミを置く。

【伊藤俊喜】

「プレス空知」空知新聞社2005年9月3日号4面
「長年、お疲れ様」
上砂川・うずら理髪館が閉店
孫から電報、家族から花束


 【上砂川】○…うずら理髪館=渡邊菊松さん(88)経営=が8月31日閉店した。午後4時半、最後のお客さんを送り出したあと、連日のお客さんでパンパンに張った足を手でゆっくりとさすった。
 ○…「一つのことをやり遂げたおじいちゃんのことを誇りに思っています」。札幌の孫から電報が届いた。ゆっくり文章を口にして「うれしねえ」と相好を崩した。31日は奥さんと1男2女のこどもに囲まれて、54年間の慰労会が自宅で行われ、花束も。
 ○…これからは、ようやく第2の人生。「周りからは、趣味を持てってね」。「カラオケ、ゲートボール、囲碁、俳句…そんなにいっぱい言われてもどれか迷っちゃうよ」。 まずは今月15日、初めて出席する敬老会を手始めに、ゆっくり旅行にも行きたい考えだ。

【伊藤俊喜】

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